恒久平和への願い新たに 第40回千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要

2020年10月2日(金)

 

 2020年10月1日(木)の本願寺新報で、9月18日(金)に営まれた「第40回千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要」が報じられた。

 宗門を代表して、本願寺派総長の石上智康師が、「平和宣言」を発し、「心を通い合わせ、痛み分け合い。協力し合って生きていく先にこそ、苦難を乗りこえ、平和をより確かなものにする道が開かれていく」と述べ、最後に、「本日、この同じ時に全国各地の寺院から、平和の鐘の音が鳴り響きます。鐘の響きに込められた私たちの願いが、世界へ、子や孫へ届いてゆくよう、共に精いっぱいつとめてまいりましょう。」と高らかに宣言された。

 法要に先立ち、「いのちの尊さ」「非戦・平和の大切さ」をテーマにした宗門校生の作文の内、中学と高校のそれぞれ最優秀作文に選ばれた安達千紗さん(福岡・敬愛中3年)と中馬朋香さん(大阪・相愛高1年)が作文を朗読した。

 また、宗派(西本願寺)製作映画「ドキュメンタリー沖縄戦」が、法要に合わせて4教区で上映会が行われた。(全国上映)

 

「千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要の願い」

私たち浄土真宗本願寺派では、戦後、本願寺ならびに大谷本廟において、「戦没者追悼法」を修行してまいりました。あわせて1981昭和56年から、毎年9 18日に、東京都千田区にある国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑において、「全戦没者追悼法要」をお勤めしてまいり ました。

「全戦没者」という言葉には、人類が繰り返してきた戦争によって、尊いいのちを失われ た世界中の全ての戦争犠牲者への思いが込められています。

また、毎年お勤めしている918日は、15 年にわたる「アジア・太平洋戦争」につながっていった「満州事変」の発端である「柳条湖事件」が1931昭和6年に起こったその日でもあります。

国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑は、1959 昭和34年に建てられた国立の墓苑で、主に「アジア・

太平洋戦争」で亡くなられた軍人から民間人にいたるまでの、ご遺族のもとに帰ることの  できなかった約35 万の方々のご遺骨が納められています。

それらの経緯からしても、この墓苑は、国籍・思想・信条などを超えて、全ての戦没者  を追悼するに相応しい厳粛にして大切な場所であると言えます。

 

(以下は ttps://www.hongwanji.or.jp/news/upload_img/000998-02.pdf

 


「平和宣言」浄土真宗本願寺派総長 石上智康師

平 和 宣 言 

いま世界は、現代人がかつて経験したことのない危機に直面しています。

    昨年2019年12月、病原体が特定されていない肺炎が報告され、その後、新型

 

コロナウイルス感染症と称されるこの病気は、瞬く間に世界中にひろがりました。現在

 

までに死者数は約90万人以上にのぼり、いまなお感染の勢いは収まる様子を見せてい

 

ません。                

 

 

このような中、歳月は人を待たず流れ、本年も9月18日を迎えました。本日ここ国

 

立・千鳥ヶ淵戦没者墓苑において関係者が集い、第40回千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要

 

を修行いたします。特にこの厳しい状況の中で、終戦75年という節目のご法要を行

 

うことの意義を改めて考えることは大切なことです。

 

 (以下は  https://www.hongwanji.or.jp/news/upload_img/000998-jp.pdf



ドキュメンタリー 沖縄戦 知られざる悲しみの記憶 

製作:浄土真宗本願寺派(西本願寺)

【ポスターより転載】

 戦後75年 沖縄戦・体験者12人、専門家8人による証言

 日本で唯一の地上戦が行われた沖縄。その凄惨な戦闘をほとんどの日本人が知ることなく75年の年月が経とうとしている。本土への疎開のため多くの子供たちの乗った対馬丸がアメリカの潜水艦によって撃沈され1482人が死亡、嘉数高知の戦いでは多くの日本兵、そしてアメリカ兵が戦死。陸軍司令部のあった首里城の攻防。さらには渡嘉敷島で起こった集団強制死。そして摩文仁の丘での牛島司令官の自決。だが、戦闘はそこで終わっていない・・。

 戦死者20万656人、県民だけを計算すると、当時の人口の3人に1人が死亡したことになる。そんな戦闘はどのようにして始まったのか? 住民が見つめたものとは何だったのか? その歴史記憶を克明に描く。沖縄戦体験者12人の証言と専門家8人による解説。そして米軍が撮影した記録映像を駆使して紹介。

 監督は原発事故の悲劇を描いた劇映画「朝日の当たる家」(山本太郎出演)で話題となった太田隆文監督。原発事故に続き、今回は沖縄戦をドキュメンタリーで描く。「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」「沖縄スパイ戦史」「主戦場」に続く、戦争ドキュメンタリー作品の傑作。(上映時間1時間45分)http://www.okinawasen.com/


「世界で一番美しい言葉を」 福岡県 敬愛中学校3年 安達千紗

 「命は大切だ。命を大切 に。そんなこと何千何万回言われるより『あなたが大切だ』誰かがそう言ってくれたら、それだけで生きていける」この言葉は2005年、多くのメディアに掲載された公共広告機構、現在のACジャパンの広告作品のものである。

  人の命は儚いもので、それは常識として「命を大切に」と言われる現代も、言われなかった戦時中も同じだ。昨今、平和学習の感想文に「ピンとこない」「よく分からない」と書

く学生が増えていると聞く。確かに特攻隊の残酷さや原爆の悲惨さというものは、目で見なければ分からないと思う。

 実際、現代を生きる私達が直面した多くの苦難は、未来を生きる人々には理解しづらいものだろう。私の身近なところで例を挙げるならば2028年の西日本豪雨と2020年の新型コロナウイルスの感染拡大だろうか。豪雨は見慣れた道を土砂で埋め、新型コロ ナウイルスは世界を混乱に陥れた。そんな曇天に覆われたような日々を知らずに育つのだ。最初に述べた言葉を覚えているだろうか。命が大切なのも、戦争がいかに哀しいものかも、皆知っているのだ。平時では殺人は罰せられる。だが人同士が殺し合い、それが容認された、否、容認されている戦時下で最も人びとを苦しめたものは何だろう。苦痛、空腹、孤独、むろんそれもあるに違いない。けれど一番は「あなたが大切だ」という一言を、大切な誰かに言ってもらえなかったことではないだろうか。言ってもらえない環境だったのではないだろうか。戦地に赴く息子を見送る母、ー途に愛した人に別れを告げる青年、何の感謝も口にできぬままに友を亡くした少女ー 。伝え聞く話の中でしか触れることの叶わない人々が欲した一言。実のところは分からない。しかし「命は大切だ」「戦争は非情なものだ」そんな言葉に対して「難しい」と言い、その先を考えないのであればせめて、「あなたが大切だ」その一言を大切に、国境を越え、戦争など生まれないような人と人の強い繋がりを築くべきだと、私は考える。

 

「儚いいのち」 大阪府 相愛高校1年 中馬朋香

 

私の祖母の父親は戦争で戦地に赴き、そのまま帰らぬ人となりました。祖母はまだ幼くて、父親がどんな顔でどんな性格なのかも瞹昧にしか覚えていないといいました。家族の中で疎開したのは祖母だけで、「毎日不安だったよ。怖かったよ。お母さん、お父さんって泣いた日もあったよ。ご飯も美味しくなくて、お風呂もなかなか入れなかったよ」と私に優しく、切なく、時には泣きそうになりながら教えてくれました。想像をはるかに超えた戦争の体験談は、私に大切なことを気づかせてくれました。 

 一般人を巻き込み、真夜中に突然鳴り響くサイレ ン、逃げ惑う人々、道に横たわる死体、考えられない現実に、胸が苦しくなりました。この広い世界にたった一つ、他のものとは代えられないかけがえのない「いのち」が、爆弾一つで一瞬にして砕け散るのです。何人もの人が悲しみと僧しみ、不安と恐怖にかられ、親を亡くした子どもが泣き叫ぶ光景は、当時は当たり前とされていました。そう考えると、今日の私たちの平穏な日常生活が、実はとてつもなく幸せであることに気づきました。 

 「天上天下唯我独尊」私のいのちは天にも地にも、たった一つしかない尊いいのち。私は戦争と聞くと、この言葉を思い浮かべるようになりました。一人ひとり、かけがえのない入生、他の誰でもない私のたった一度きりの人生。今日も生かされている「いのち」の実感、明日への希望、叶えたい夢は私にだってあるのだから、兵隊になって帰ってこなかった曽祖父にもあったに決まっています。たとえ儚くとも、いのちはかけがえのない夢や希望が詰まった大切なものです。今でも世界のどこかで起こっているいのちを奪い合う戦争が、すぐにでもなくなることを願っています。   

 


 いつも疑問に思うことがあります。

 首相及び閣僚、国会議員の「靖国神社」参拝の話題がことある毎に報道されますが、「国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑」参拝については、私の知る限り、あまり報道はされていないように思います。実際は、首相及び閣僚、国会議員の方々が参拝しているにもかかわらずです。

 私の願いは、マスコミは、「国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑」についてもっと積極的に発信してほしいということです。

 ニュースとして、首相や閣僚が靖国神社参拝を取り上げれば、近隣の中国、韓国等の反発を招くというニュースバリューがあると考え、「国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑」との比較化を考えているのではないかという疑念を私は抱きます。

 ご承知の通り、「靖国神社」は神道系宗教法人ですが、信じる宗教の如何に関わらず、英霊として神道儀礼に基づいて祀られるという問題が指摘されています。靖国神社については、政教分離の原則、信教の自由、A級戦犯の合祀等々、多くの問題を抱えています。

 一方、「国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑」は日中戦争及び太平洋戦争の戦没者の遺骨の内遺族に引き渡すことができなかった遺骨を安置している施設です 。名称の通り「国立」であり、「無宗教施設」として、各自の宗教に応じて参拝できる施設です。実際、宗教団体には戦没者追悼法要を行っていて、浄土真宗本願寺派では、毎年9月18日に、悲惨な戦争を再び繰り返してはならないという、平和への決意を確認するために、全戦没者追悼法要を修行しています。(なぜ9月18日か等詳細は下記参照)

 

戦争と平和について考える(最誓寺HPから)

2014年9月28日 平和を考える 「ヤスクニ」と「国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑」

2016年8月 2日 非戦・平和の誓い 安倍晋三さんの祖父安倍寛氏(元衆議院議員)は、あの戦時中にありながら非戦の精神を高らかに掲げ、軍事政権と厳しく対立した方として尊敬されています。

2017年8月15日 戦争と平和を考える(特攻) 池上彰の戦争を考えるSP第9弾 『特攻』とはなんだったのか』