久しぶりに聞いた、「品格」という言葉。それも、新横綱昇進の口上だった!
2021年10月1日(金) 浄土真宗本願寺派最誓寺住職堀田了正
「やじの品格」
東京新聞の「私説」コーナーに、「やじの品格」と題した一文が掲載されていた。
2020年2月24日と少々古い記事であるが、今回の新横綱照の富士関の横綱昇進時の口上を聞いて思い出した次第である。
以下に紹介したい。
(前略 全文は仏教語解説コーナー「品格その1」参照)
こう書くのも、国会でのやじを巡る状況があまりにもひどいからにほかならない。
直近では、立憲民主党の辻元清美衆院議員に対する安倍晋三首相の「意味のない質問だよ」だ。「鯛(たい)は頭から腐る」と言われ、「罵詈(ばり)雑言の連続で私に反論の機会が与えられなかった」からだそうだが、感情むき出しで、何の機知も感じられない。(以下 同)
「品格」という言葉は、2006年のユーキャン流行語大賞を獲得した言葉である。(この年の大賞は、この「品格」と「イナバウアー」でした。)
「品格」が流行語大賞に選ばれたのは、藤原正彦氏の著作『国家の品格』が、200万部以上も売れ、ベストセラーとなったことが要因となったようである。(日本では50人に1人以上の人がこの本を読んだことになります)
★「横綱の品格」
2021年7月21日、日本相撲協会は、秋場所(9月12日初日・両国国技館)の番付編成会議と臨時理事会を開き、大関照ノ富士関(29)(本名ガントルガ・ガンエルデネ、モンゴル出身、伊勢ヶ浜部屋)の第73代横綱への昇進を正式に決めた。
横綱昇進の伝達を受け、照ノ富士関が述べた口上は、「謹んでお受けいたします。不動心を心掛け、横綱の品格、力量の向上に努めます。」であった。
多くの国民が抱いたであろう「横綱の品格」という言葉は、両膝のけがなどで大関から一度陥落し、序二段から出直しての昇進を遂げた照ノ富士関ならばこその言葉であるからと、私は敬意を表したいと思う。
(大関陥落経験後に横綱昇進を果たすのは、昭和以降では1979年の三重ノ海以来2人目。関脇から横綱まで最短2場所での大関通過は、双葉山、照国と並ぶスピード記録となるそうである。)
横綱の品格
横綱昇進の条件は、力量だけでなく、品格抜群とされることを基準としている。
横綱の品格基準は日本相撲協会によると、
一 相撲に精進する気迫
二 地位に対する責任感
三 社会に対する責任感
四 常識ある生活態度
五 その他横綱として求められる事項
だそうである。
日本相撲協会の横綱の品格の基準は、それこそ「当たり前」のことであると思う。それをあえて照ノ富士関が、口上で述べたとなると、極々少数者であろうが、「当たり前」のことを「当たり前」に行なれなくなってきた近年の相撲界に警鐘をならすとともに、本来の「相撲道」の復活に、自らが先頭に立って行く並々ならぬ決意を表明したのであろうと私は思わずにはいられない。モンゴル出身の横綱が多く排出しているからこそ、モンゴル出身の照ノ富士関が「横綱相撲」という本来の「横綱の品格」に基づいた相撲道を実践することを表明したと思うのである。
★「親方の品格」に期待する。
大相撲で史上最多45度の優勝を誇り、2021年9月30日付で引退した間垣親方の元横綱・白鵬(36)。後継者に照ノ富士関を指名したそうである・・・・・。
今後親方として,弟子を育てていくであろうが、「親方の品格」とは何かを、示してほしいところである。異例のことだそうであるが、日本相撲協会の規則を守るなどの誓約書に署名した上での年寄「間垣」襲名が認められたということであるからこそ。
この「品」という言葉は、「上品(じょうひん)」「下品(げひん)」という使われ方もしますね。
実はこの言葉は、「上品(じょうぼん)」「下品(げぼん)」と読んで元々仏教語なのです。
※これについては,別項に譲る。